おやすみを言う前に
「なにこれ。」
翌日、講義を終えて帰宅すると、ドアに設置されている新聞受けに紙が挟まっていた。
抜いてみる。文庫本程の白い紙に一言、『好きです』と手書きが。
もしかして。すぐに昨晩の出来事を思い出したけれど、証拠もないのでその紙を処分することしか出来なかった。
そこから毎日、様々なメッセージが投函されるようになった。
『今日も可愛いね』
『好きだ』
『彼氏と別れろ』
『下着見せて』
『あばずれ女』
『かわいいかわいいかわいい』
『キスさせて』
『死ね』
『好き好き好き好き好き』
『おかえり』
『今日はデート?』
多い時は一日に複数回送られるメッセージに、だんだん精神的に消耗していった。拓馬には言えなかった。
隣人かもしれないという疑念を抱き続け最初のメッセージから二週間が過ぎたある日。
バイトから帰ると、私の家の前に立っている人影がいた。
怖くて足がすくんでしまうと、その人影は新聞受けに何かを差し込むとその隣のドアへ入っていった。
震える足で近寄ると紙が挟まっていて、いつもと同じ字で『バイトお疲れ様』と書いてあった。やはり隣人だったのだ。