おやすみを言う前に
最寄りの駅で降りて改札を出る。すると、後方で聞き慣れた声がした。
振り返る。拓馬がいた。
どうやら偶然同じ電車に乗っていたらしい。こんなこともあるんだ。
「麻衣子?」
気付いた拓馬がこちらに笑顔で近付いてくる。しかし、彼の横に見慣れない女の人がいた。拓馬と同じ年くらいのとても美人な女性。
「偶然同じ電車やったんやなー。」
「……。」
「雪町くんの彼女?」
「せや。可愛いやろ?」
「若いし可愛いね。雪町くんにはもったいないんじゃない?」
「やかましいわ。」
仲良さげに喋る二人を目の前にして、私の中で何かが壊れる音がした。