小児病棟
「おし! 今日は全員抜いてやる!」

先生の合図に、正哉はいち早くダッシュを決めた。何を隠そう、正哉はマラソンが得意なのである。こうして毎日走らされているうちに自然と早くなった。正哉だけではない、みな毎日走っていることで心肺機能は著しくアップしていた。学校対抗の駅伝大会でも、健康な他の学校の子供と混じって二十校中十位以内に入れるほどだ。

「かっつん! 待ってくれー!」

悟が後ろから声をかける。がっちりとした体格なれど、ちょっぴり太めの悟。運動神経はいいが、正哉に比べるとスタミナの点で若干劣る。

「悟! 先に行くから!」

正哉は、そんな悟を尻目にスピードをあげ、ぐんぐんとその差を広げてゆく。

「今日は調子がいいぜ!」

正哉は一人、また一人と追い抜いていく。

春の空のもと、子供たちはみんな一生懸命走っていた。
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