小児病棟
「あ……そういえば……」

正哉は、あのコーラスグループの歌のとき、みんな涙を流して聞いていたのを思い出した。

あの時は、なぜみんながあれほどに泣いていたのか軽く理解に苦しんだが、今の北川さんの話をきき、あの涙の意味が、さっきよりは少しだけ、理解できるような気がした。

「正哉!」

「……なに?」

「がんばって、早く喘息治せよ?」

「……うん……」

北川さんは、正哉の顔をみて微笑んだ。正哉も、なんとか笑おうとするが、いかんせん引きつってしまい、あまり笑えてないのが自分でもわかった。
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