小児病棟
また、塩原君は野球も詳しかった。特にジャイアンツの大ファンで、やはりノートにジャイアンツ関係の新聞の切り抜きをしていた。塩原君の枕元の本棚には、切り抜きで作られた年度別のジャイアンツに関するデータブックが並んでいた。テレビを観ることのできない病室で、塩原君は夜になるといつもラジオでナイター中継を聴いていた。
「なんだよー! 先発ダメじゃん! 交代だ交代!」
などと、よく一人でブツブツ言っていた。周りはそれを聴けば、今ジャイアンツが勝っているか負けているかが解ったものだった。ジャイアンツが負けていようもんなら
「おい! 正哉! お前らうるせーよ!」
と、明らかに機嫌が悪くなり、正哉や悟に八つ当たりをしたものだ。そのため正哉は、毎晩のようにジャイアンツが勝てばいいな、と思っていたものである。
――塩原君が退院してから、ジャイアンツの結果わかんなくなったな……
正哉は、思い出すと少し、しみじみとした。
「なんだよー! 先発ダメじゃん! 交代だ交代!」
などと、よく一人でブツブツ言っていた。周りはそれを聴けば、今ジャイアンツが勝っているか負けているかが解ったものだった。ジャイアンツが負けていようもんなら
「おい! 正哉! お前らうるせーよ!」
と、明らかに機嫌が悪くなり、正哉や悟に八つ当たりをしたものだ。そのため正哉は、毎晩のようにジャイアンツが勝てばいいな、と思っていたものである。
――塩原君が退院してから、ジャイアンツの結果わかんなくなったな……
正哉は、思い出すと少し、しみじみとした。