小児病棟
その日の夕食時、食堂に集まった子供たちの前に、婦長がやってきて口を開いた。

「みなさん、ちょっと聞いて?」

婦長の表情は、とても険しかった。子供たちは、その顔色がただ事ではない雰囲気を察し、心配そうな表情で見つめる。婦長は、一旦、目を閉じ、少し経って目を開けると、ゆっくりと、いつもより少しだけ細い声でしゃべりはじめた。

「去年までここに入院していた塩原君が、今朝、家で発作を起こして救急車で運ばれたそうです……でも……」

婦長は一瞬、言葉をつまらせた。
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