小児病棟
「薬を作るために、たくさんのマウスが犠牲になっているんだ。でも、そのおかげで君達も私も生きられる。君達が飲む薬も、マウスのおかげで作られているんだ。かわいそうだと思うなら、そんなマウス達が無駄にならないよう、しっかりと肝に銘じて薬を飲み、病気に打ち勝つようがんばるんだよ?」
 
部屋はシーンと静まり返った。子供たちはみな深刻な顔でうつむいている。二ノ宮先生は、今度は笑顔で子供たちに話しかけた。

「おいおい、そんなに深刻に考え込まなくてもいいよ。これを観ても観なくても、君達がすることは変わらない。今までのように、体を鍛えて、薬を飲んで、早く退院しよう。みんな中学は地元に戻れるようにしないと。先生も協力するから」
 
二ノ宮先生のいつもの温和な表情に、一同ほっとした。

「はい、じゃあ教室に戻っていいからね」

「はい」

みな、一同に席を立った。
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