小児病棟
「ねえ、君……」

正哉が話しかける。男の子は正哉のほうを振り向いた。おどおどとしたその目は、誰が見ても不安だらけ、というかんじである。

「名前、なんていうの?」

「……つとむ…田中つとむ…です……」

正哉の問いかけに、男の子は自分のお名前をやっとこさひねりだした。

「つとむか、俺は、正哉!」

正哉は、そんなつとむに笑顔で自己紹介をした。間髪を入れず裕二も

「俺は、裕二!」

と、自分を親指で指した。心なしか、つとむの表情が緩んだような気がした。
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