小児病棟
「イッチニッ! サンシ!」
「ゴーロク! シチハチ!」

乾布摩擦は毎日、掛声をかける当番が決まっている。全員、当番のかけ声にあわせて腕から順番に皮膚を摩擦していくのである。時間はだいたい十分前後、乾布摩擦が終わる頃には、子供たちの胸や腕は真っ赤になっている。

「かっつん、歯磨き行こうぜ」

乾布摩擦を終えた正哉に、悟(さとる)が声をかけてきた。

悟は正哉と同じ五年生、正哉と同じく入院して二年目の男の子だ。
正哉と違い、体はがっちりしていて、いかにも腕白坊主といった雰囲気。一見するとおよそ患者には見えない。
この病棟に五年生は男子四人、女子三人のあわせて七人いるが、その中で正哉が一番古株、三日遅れで入院してきた悟が二番目に長い。

「うん」

二人はそれぞれの部屋に戻り、洗面用具を抱えて洗面所へ向かう。まず顔を洗って歯を磨き、それから朝食の合図があるまでは部屋で登校の準備をするのが毎日の日課だった。
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