小児病棟
「いただきまーす!」

朝食は毎朝七時、食堂でみな揃って食べる。
賄いのおばちゃん、泉水さんと小林さんは毎日、みんなが起きる前から、全員の分の食事を作っている。

「ぼけなすかあ……」

テーブルに並べられているお皿に視線を落とした正哉は、椅子に腰を降ろすや、がっくりと肩を落とした。
茄子と長ネギを味噌味で煮付ける、子供たちの中で通称「ぼけなす」と呼ばれるこの料理が、正哉は苦手だった。茄子とネギのぐにゅっとした感じがどうしても克服できない。
子供たちには極めて不評なのだが、栄養的に優れているのか、はたまた単に作るのが簡単なだけなのか、賄いの泉水さんそんなことおかまいなしに、週に一度くらいのペースで出してくる。

「仕方ない……漬物で食うか……」

正哉は、野沢菜の漬物をひとかけら取り、その半分をチマチマとかじるとすぐさま大量のご飯を口に詰め込んだ。
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