小児病棟
「……ねえ悟……霊安室、死体あるかな……」

正哉は怖がっていることを悟られないように、声が震えないよう配慮しながら悟にたずねた。

「死体、そりゃあるよきっと。だってここには何百人て患者がいるんだぜ? 毎日誰かしら死んでるはずだよ」

悟はあっけらかんと答えた。

――そりゃそうだろうけど……悟、怖くないのかな……

正哉は、悟と自分との差を痛感した。
悟は別に強がっているのではなく、本心から思って行動しているのがわかる。それに較べ自分は、霊安室など想像するだけで尻込みをしてしまう。今だって心なしか手の指先が冷たくなっている。正哉は、自分の気持ちをコントロールすることに必死になっていた。
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