先生へ
 いっそ、一年間の淡い恋だった、一五歳の幼稚な勘違いが発展してしまったような恋だったんだ。そう思わせてくれればよかったのに。
 先生はそうしてくれませんでしたね。

 二年生の新人戦が終わった後、何故か私に連絡を寄越しました。忘れかけたんですよ。新しい部員に新しい環境。
 先生が居なくても新しい環境は続々に押し寄せて、辛い片思いなんて奥の奥の方に追いやっていたんです。
 なのに、たったの一文のメールが、私の胸を一気に高鳴らせて、泣きたくなるほどに懐かしい想いを蘇えらせたのです。
 
 それから、天国と地獄を行ったり来たりするような二年間が続きました。
 先生からメールが来れば天国。馬鹿みたいに感情を高ぶらせて、お母さんに相談して、先生に近況を伝えました。
 先生からメールが来ない日々は地獄。本当に偶にしか来ないメールを待つのは苦行でしかありませんでした。多感な高校生の中で生きることも私にとっては苦痛でしかなく、耳をつんざく笑い声も人を傷つけることに抵抗のないクラスも、逃げ出したくて堪りませんでした。

 一本の蜘蛛の糸を捜すように空を眺めて、先生からのメールを待ちました。
 
 何か行事がある度に先生からはメールがありました。学園祭に修学旅行、バレーの試合など。
 メールする度に、先生が好きで好きで堪らなくなって、食事も睡眠もままならないほど想いを募らせました。
 
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