背伸びをして。

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しとしと。しとしと。
雨の日の電車はどうしても憂鬱な気分になる。湿気のせいでうねり始めた髪も、どこかの駅でおじさんの傘に当たってびしょ濡れになってしまったスカートも、沈んでく心に拍車をかける。

雨のせいだけというわけでは、ないんだけど。

がたんがたんと揺れる電車の中で、またため息をついてしまった。ああ、また幸せが逃げてしまう。そう思っても、ため息は止まらない。それどころかどんどん深くなっていく。わたしの気持ちと比例する。

はああ。

ため息をついて、その勢いのまま後頭部をごつんっと窓に叩きつける。そのまま遠くを見つめる予定だったのに、わたしの視界は男の子の顔に遮られた。その顔の中に、異様に見開かれた目が2つ。はっきり目が合った瞬間、今度は口がぱかっと開いた。

んん？なんだ？
目も口も開かれたその顔ははっきり言って変顔に近くて、相当な間抜け面だ。ちょっとにやけそうになった瞬間、

「カコ先輩？」

間抜けな口から声が溢れた。その声に乗客が振り向く。当たり前だ、電車の中でその声量はちょっ…

「カコ先輩ですよね！？」