呉服屋の若旦那に恋しました
勉強しなさい
就活に失敗して彼氏にふられてついでにその元彼がマザコンだったということが発覚してショックを受けてる所に京都に連れ戻され政略結婚。
私の人生あんまりだ。
私が何をしたというんだ。
ああ、神様。私はもう何も贅沢を言いませんからどうか普通の幸せをください。
「それが既に贅沢な願いだっつーの」
「……」
「起きろおらっ」
「ぎゃー!!」
既に着物姿の志貴が、べろっと布団を引きはがした。
私は反射的に志貴を蹴っ飛ばしてしまった。
「主人を足蹴りにするとはいい度胸だな……」
「痛い痛いすみません防衛本能がついすみません!」
志貴は涼しい顔で私の足裏のツボをぐぐっと凄い力で押してきた。
私は涙目でひたすら謝った。
……昨日のことが夢だったら良かったのに。
だけど、私は今慣れない敷布団に寝ているし、志貴が開けた襖からは美しい庭が見えるし、今目の前には志貴がいるし……。
昨日のことが夢じゃなかったと分かった私は、分かりやすく落胆した。
「顔洗ったら母さんの部屋に行け」
「えっ、なんで」
「着物に着替えてもらわないと、店の仕事を手伝えないからな」
「え」
「別に今ここで俺が着付けてもええけど」
「いいですいいです結構です」