呉服屋の若旦那に恋しました
“志貴兄ちゃんまで、しんじゃやだっ……”。
あの日の衣都の言葉が蘇った。
自分がすべきことは、桜の分も、薫さんの分も、しっかりと生き抜くことだと、やっと気づいた。
生きよう。
ちゃんと。
前を向いて。
俺はその日から、ずいぶんと書くのをやめていた日記を再開した。
そして、今日あった出来事、感じたことを、事細かに記した。
天国にいる2人に、届ける様に。
悲しかったことも、嬉しかったことも、365日欠かさず記した。
それが俺に唯一出来る、生きている事への感謝の表し方のような気がしたから。