呉服屋の若旦那に恋しました


――――――あの小さな切り抜きには、こう記してあった。

28歳女性、男児(11歳)を庇い重体。

日付は母の命日の1日前。

その新聞が挟まっていたページに書いてあった文は、まだ幼い志貴の心の叫びそのものだった。




『怖い

 どうやって償えばいい

 怖い

 もう衣都に会うことも、怖い』




……志貴は、一体どんな気持ちで私と一緒にいた?

お母さん、私は今、どうすればいい?




ねえ、もしかして、

私と志貴を繋いでいたものって、

赤い糸なんかじゃなくて、

重たい鎖だったの?




志貴に会えなかったあの4年間で、もしかしたら彼は、本当に一生私から離れようとしていた……? 解放されようとしていた……?

私が就職に失敗したから、私に同情したから、罪意識があるから、償うために守るって決めたから、私をまた救ったの……? 私から離れない道を選んだの……?


何も知らなかったのは、私だけだった……?



「お願い、もう彼を、自由にしてあげて……っ」



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