呉服屋の若旦那に恋しました



……私はそっと、志貴の机の引き出しを開けた。

私が、ずっとずっと前にあげた、赤い糸のお守りがそこに入っていた。

私は、それを手に取って、ぎゅっと胸に押し付け、かたく目を閉じた。


そして、1つ決意をした。

もう、逃げてはいけない。

志貴の為にも、私の為にも。



「じゃあ、また後で連絡する。仕事中邪魔して悪かったな」

「ああ、気を付けて」


家族の声が遠くなり、聞こえなくなった。

私は、ゆっくり障子を開けて、志貴を呼んだ。


「衣都、もう起き上がって大丈夫なのか?」


私に気付いた志貴は、縁側で靴を脱いで、家に上がってきた。

私は、そんな志貴の両腕をつかんで、じっと彼の瞳を見つめた。


「志貴、あのね、聞きたいことがあるの」


―――こんなに緊張して声が震えたのは初めてだった。

志貴も、いつもと様子の違う私にすぐに気づいて、また、何を聞かれるか悟ったような表情をした。

庭が一望できる廊下で、私は志貴に、真実を確かめるための質問をした。


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