呉服屋の若旦那に恋しました
「なんで私は、4年間志貴と会っちゃ駄目だったの……?」
志貴の漆黒の瞳が、明らかに揺らいだ。
彼は、私から目を逸らして、俯いた。
そして、擦りきれそうなか細い声で、
「それは、答えられない……」
と、言った。
私はその瞬間、瞳から光を失った。
なんとか抑えていた“嫌な予感”が、堰を切ったようにあふれ出し、一気に胸の中をざわつかせた。
「どうして……?」
訴えかける様に彼の腕をつかむ力を強めた。
「それだけは、答えられないんだ」
「……もしかしてそれって、あの事故のことが関係してる……?」
「え」
私の口から“事故”という言葉がでたことに、志貴は激しく動揺していた。
私が事実を知っていることを、彼は知らなかったのだろう。
「ずっと前からそうなんじゃないかって思ってたよ……私。でもずっと、知らないふりをしてた。私は志貴が好きだったから、関係性を壊したくなかった」
「衣都……」
「ねぇ、志貴は、償うためにずっと私に優しくしてたの……?」
「違う!!」