呉服屋の若旦那に恋しました
突然空気は変わり、私とおばあちゃんは多分おんなじ表情をしていたと思う。
「私、プロポーズされたの」
「え」
「今度彼を連れてきてもいいかな?」
「ま、まあ、そうなの、どうしましょう、まあ」
おばあちゃんは嬉しそうに自分の顔を両手で挟んだ。私もおばあちゃんも、かなり動揺していた。
藍ちゃんが、結婚する。
自分のことのように嬉しいし、藍ちゃん以上に私とおばあちゃんは慌てていた。
そんな私たちを見て、藍ちゃんはふっと呆れたように笑った。
「今から来るわけじゃないんだから。まあとりあえず、お父さんにはもう連絡したから、今度3人で会ってくる。その帰りにおばあちゃん家にも寄る予定」
「わ、分かったわ。お掃除屋さんにお掃除頼んでおかないと……」
「そんな長居しないからいいよ」
「駄目よそんなの、徹底しないと」
おばあちゃんはそう言って席を立ち、お掃除屋さんの電話番号を調べに行った。
藍ちゃんは呆れたようにおばあちゃんを見つめていた。
そんな藍ちゃんに、私は食い気味に質問をした。
「あ、相手どんな人!?」
「普通の会社員。中学の同級生だった人」
「え!? 中学の!?」
「同窓会で再会して……っていうありがちなやつよ」
「すごい!! 少女まんがみたい!!」
「どこが」
「おめでとう!! 凄く嬉しい!!」
ものすごい勢いで祝福すると、お姉ちゃんはそれに圧倒されて一瞬戸惑ったように表情を強張らせたが、ゆっくり目を細めた。