呉服屋の若旦那に恋しました
―――中本さんの言葉に、私は完全に決意を固めた。
たとえ志貴に許してもらえなくても、私にはまだ、彼に伝えなきゃいけないことがある。
この、20冊分の感謝を、まだ、私は彼に伝えきれていない。
私は、涙をふいて、立ち上がった。
もう、泣いている場合じゃ、無かった。
……小指に絡みついた赤い糸の先を辿ろう。
そこにはきっと、嘘つきな彼がいる。
そう信じて、私は、走った。
世界一愛しい、嘘つきな彼の元へ。