呉服屋の若旦那に恋しました

私とあなたを繋ぐ糸





「こら、動くんじゃない、ぴしっと立ちなさい」

「痛いー苦しいー」

「我慢しなさい」


少し肌寒くなった11月中旬。

見事な紅葉で、オレンジ色に染まった庭に見向きもせずに、志貴はお座敷で着付けと格闘していた。

そんな彼の姿を、私は笑ってみていた。


「衣都、笑ってないで雪花(セツカ)のからだ支えろよ」

「ママー、パパ怖いー、雪花苦しいー」

「ママに甘えるんじゃない」


ふらふらしながら着付けて貰っている愛しいわが子に、私は笑みが零れ落ちた。

小さな彼女に着付けをするのは結構至難の業らしく、志貴は珍しく苦戦していた。というのも、雪花が文句を言うから進まないだけなんだけど……。


「雪花、着付け頑張ったら、おじいちゃんおばあちゃんと美味しいもの食べに行けるよ?」

「本当?」

「うん、本当。雪花の大好きなものなんでも頼んでいいよ。今日は雪花の御祝い事だから」

「わあいっ、ママ大好き」

「こら雪花動かないっ」

「パパ怖いー」


はしゃいで動き回りそうになった雪花を、志貴は帯で捕まえた。

それでも雪花はきゃっきゃとはしゃいで落ち着きが無い。まったく誰に似たんだか……と、志貴が私をじとっと見つめた。

雪花は、すくすくと成長し、7歳になった。今日は七五三の日で、浅葱家も朝から大忙しだったが、仕事は中本さんと志貴の両親、そしてお手伝いをお願いしたヘアメイクさん達に任せた。

夜は志貴のご両親も含め食事に行く予定である。


「あのねー、そう言えばこの間ねー、2組の穂乃花ちゃんが、パパのことかっこいいって言ってたー」

「まじか。穂乃花ちゃんのアドレス聞いといて」

「穂乃花ちゃんイケメン好きなのに案外理想低いんだねって言っといたー」

「お前は恐ろしいな本当に……どこでそんな言葉覚えてきたんだ……」

「ママはどうしてパパと結婚したのー?」


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