呉服屋の若旦那に恋しました






だって気になるもの。

お父さんとお母さんは、どんな風に出会って、どんな風に恋をしてきたのか。

だって2人が恋をしたから、私が生まれたんだもの。

そう言うと、お父さんは目を細めて笑って、私の頭を優しく撫でた。


「短く言うと、お父さんとお母さんは赤い糸で結ばれてたんだ」

「何その子供騙し」

「子供騙しじゃないよ、本当なんだ」

「……どういうこと?」


私が眉根を寄せて問い詰めると、お父さんがさりげなく私の荷物とランドセルを持って、お母さんを置いて、奥の部屋に入るよう促した。


「続きは今日の夜話すよ。今はお母さんがいるから恥ずかしいから後でな」

「本当に? 嘘つかない?」

「つかないよ。約束だ」


そう言って、お父さんが小指を絡めた。

お父さんのかっこよさはやっぱりいまいちよく分からないけど、時々かっこよくなるのは認める。


「約束だよ?」


お父さんとお母さんが赤い糸で結ばれていたという表現が、

ただの子供騙しじゃなかったと知るのは、今日の夜の話である。


まだ今はよく分からないけど、その赤い糸のおかげで私が生まれた。

そう思うと、その子供騙しのような表現も、なんだか悪い気はしない。


私は、お母さんと赤い糸が繋がっているお父さんの小指と強く指を絡めて、約束を交わした。

遠くでお母さんが、何2人でこそこそ話してるの? と、声をかけた。


私とお父さんは、口に人差し指をあてて、


「内緒」


と言って、いたずらに笑ったのだ。








end
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