呉服屋の若旦那に恋しました
俺は五郎の口を慌ててガードし衣都の頭をぽこっと叩いた。
衣都は折角俺が綺麗に着付けた浴衣をもう着崩していた。こんにゃろう……。
軽く殺意が芽生えたが、衣都が五郎を可愛がってくれることは嬉しいのでそんなに強くは怒れなかった。
「志貴はすぐ怒るしすぐ殴る!」
「殴ってない。叩いたんだ」
「一緒だよ!」
「こら衣都、待ちなさい」
「なに」
「立ち方教えただろ」
「……」
「ほら、両膝を揃えて、前の足を後ろに引くようにして……」
「う、うう…難しい……」
「ふ」
プルプルしながら立ち上がる衣都がおかしくて思わず笑ってしまった。
つんと突っついたら面白いくらい簡単によろめいた。
俺は慌てて衣都の腕を引いて胸におさめたけど、衣都は私で遊ばないでとご立腹だった。
「はっ、しまった和んでる場合じゃない鯵が焼けてから3分が経過してしまった……!」
「いや鯵も別に3分くらいどうってことないって思ってるよ……」
「ベストな時間で食べてあげないと鯵に申し訳ない……、行くぞ衣都っ」
「えー五郎はー」
「五郎の朝食は7時15分と決まっている」
「……そうですか……」