呉服屋の若旦那に恋しました
そう言って、ぎゅっと手を握る力を強めると、衣都は急に目を逸らした。
はやく素直になってくれればいいものを……。
もし衣都じゃなかったら今強引にものにしてる。耐えてる俺を誰か褒めて欲しいもんだ。
そう思いながら、俺は、衣都と一緒に、石段をのぼった。
同じ道を、手をつないで、進んだ。
「てか元彼マザコンだったんかウケんなそれ」
「うるさいよ本当」
「写メ見して写メ」
「無いよ消したよ」
「嘘やろ絶対」
「しつこいおっさん」
「………はい」
頂上まで延々と続く道を、オレンジ色の光が、
ずっとずっと先まで、照らしていた。