呉服屋の若旦那に恋しました
「どこへ行く」
「うわびっくりした!!」
仕事が終わって、志貴が帰ってこない間にさっさと待ち合わせ場所に向かおうと思ってそろっと障子を開けた瞬間、志貴が帰ってきた。
いつもはそんなにうるさく聞いてこない志貴だが、さすがに今の格好を見ていつもと違うことに気付いたのか、志貴はやや疑うような目で私を見てる。
ちなみに今の私の格好は、淡い水色ののノースリーブワンピースに、ブランド物のアクセサリー、ブランド物のバッグだ。
見栄を絵に描いたような恰好を見て、志貴は鼻で笑った。
「不粋……」
「分かるよ、私もやりすぎた感はあるよ! でもしょうがないの! 女子には色々とあるの!」
「ふーん?」
「なんじゃい!」
「いや別に」
志貴はそれだけ言って、スパッと障子を閉めて自分の部屋に入ってしまった。
なんだアイツ、言いたいことあるなら言えばいいじゃん! むかつく!
私はカリカリしながら、久々にミュールを履いて待ち合わせ場所に向かった。
「衣都ー! 久しぶりー!」
「わー皆ー!」
お店に着くと、大学時代の友人4人が既に先に飲み始めていた。
私は女友達ふたりと抱き合ってから、一通り近況を報告して、席に座った。
オシャレな和食居酒屋で、お料理もしっかりしていてとても美味しい。大学時代は激安チェーン店にしかいかなかったのに……。
なんだか皆すっかり社会人になったんだなあと、じーんとしてしまった。
「衣都ちん元気だった?」
「元気だよー! 色々慣れないことが多くて大変だけど」
「まさか衣都ちんが京都の呉服屋に就職したいっていう熱い夢があったなんて知らなかったよ」
「あ、あははは……」