呉服屋の若旦那に恋しました
……あんなにキラキラした皆に、内定が取れなかったなんて、言えるわけが無かった。
私は、プライドのかたまりのような人間だから。
言えるわけが無かった。恥ずかしかった。
「なんなの私、私だって結城君と一緒じゃん……っ」
目に見える評価だけがすべてのように思えていたから。
でも今は、そう思っていた自分が恥ずかしい。
私はいつからこんな風に、見栄っ張りな人間になってしまったのかな。
ブブブ。
その時、携帯がクラッチバッグの中で振動した。
私は、なんとなく出る前から志貴だと分かっていたので、すぐに出た。
「もしもし」
『衣都、遅くまで飲むのはいいが明日の仕事に支障きたすなよ』
電話の主は、予想通りすこし不機嫌そうな志貴だった。
「………」
『聞いてるのか衣都』
「………」
『………衣都?』
「……神社にいるの、迎えに来て……」
『は?』
「迎えに来て、志貴……っ」
酔ってるのかな。
志貴の声を聞いた瞬間、なんだかすごく泣きたくなった。
志貴はきっと戸惑ってる。何言ってんだコイツって、思ってるんだろうな。
でも、今、1人じゃ家に帰れる気がしないんだよ。