呉服屋の若旦那に恋しました
本当に、探しに来てくれたの……?
8年前の志貴とリンクして、私は何だか少し胸が苦しくなった。
石段に座ってぼうっと志貴を見上げていたら、ばちっとデコピンをされた。
「なんでここって分かったの……?」
「GPS」
「つけたの!? どこに!?」
「なわけねーだろ。一番近くの神社から探したらいたんだよ。ここにいなかったら帰るつもりだった」
「また騙された……」
「うわ酒くさ、ほら、帰るぞ」
「……」
志貴が差しのべた手を、私はしっかり握った。
志貴の手はサラサラしてて少し冷たい。私よりずっと長い指に、手をぎゅっと包み込まれた。
……8年前は振り払ってしまった手。
あんなに酷いことを言ったのに、どうして志貴は変わらず私に優しくしてくれるのかな。
ねぇ、志貴、私、こんな見栄っ張りでプライド高い女だよ?
志貴は小さい頃から私を可愛がってくれたのに、こんな女に育っちゃってきっと残念だったよね。
ごめんね。私も本当は、とっくに自分なんかには愛想尽かしてるよ。
「……今日ね、東京の友達と飲んでたの」
ぽつりとつぶやくと、志貴は立ち止まった。
私は、まだ完全に酔いからさめていない状態のまま、つらつらと今日の出来事を話した。