呉服屋の若旦那に恋しました
「皆、仕事大変そうだけど、楽しそうだった。すごくキラキラしてて……」
「……」
「でも、すごく距離を感じたの。私も今まで大手に勤めてる人が偉いって思ってたくせに、くらべられて、腹が立ったの」
「僻みも6割入ってそうだけどな」
「そ、そうかも……しれないけど、客観的に見て、私ってこんな風だったんだって、なんか少し悲しくなって……」
「衣都は昔からプライド高いからな」
「う」
「でも別に悪いことじゃない」
「……悪いことだよ」
「確かに人の価値観は違うから、そこを自分の視点だけでしか見れずにくらべるのは良くない。でも衣都はプライドの土台にまず努力があったから、高校も大学も志望した所にいけたんだ」
「……私より上の大学に行った人に言われても」
「あれそうだったっけ」
「………」
まあいいだろ、と言って、志貴が私の手を引いて再び歩き出した。
まあよくないよ、と思ったけど、大人しく車までついていった。
一番近くの神社から探したらいたんだよ。ここにいなかったら帰るつもりだった。
志貴はそう言ってたけど、それは嘘だよね。
近場だけ探して帰るつもりだったなら、車で探しになんか来ないよ、ふつう。
『衣都はプライドの土台にまず努力があったから』。