呉服屋の若旦那に恋しました
おろおろしながらも、なんとか自分の気持ちを伝えて頭を下げると、志貴はちいさく微笑んだ。
なんだかそれがすごく嬉しくて、照れくさくて、えへへと笑ってごまかすしかなかった。
「はやく嫁に来る決心もしてくれるとええんやけど」
「う、それは……」
そう言って、今度は意地悪く口端を上げる志貴に、私は目を逸らすことしかできなかった。
とりあえず1年だけ、この人と一緒に暮らして、この人と一緒に働く決心を、しました。
この先私の人生にずっとこの人がいるかどうかは、まだ分からないけれど。
ニヤニヤと笑っているこの男は、
私の未来がどうなるのかを、もうすでに知っていそうな気がした。