呉服屋の若旦那に恋しました



志貴と会えなかった4年間、最初は寂しい気持ちもあったが、忙しかったお陰で意外とこの4年間ははやかったように思える。

もし私が東京に就職していたら、私はもう一生志貴に会わずして終わっていたのだろうか?

そう思うと、私が就職に失敗したことや、志貴と会うことを許されたこのタイミングも、なんだか運命的な気がしてきた。

そもそも志貴は私と会っていなかった4年間、何をしていたのだろうか?

そのことを聞いてみたいのだけど、なんだか聞いちゃいけないことのような気がして、ずっと聞けないでいる。


志貴も、4年間で、色々あったんだろうな。

私にも彼氏ができたように、きっと付き合っていた人もいたのだろう。

その人が美鈴さんかどうかは、分からないけれど……。


「ねえ、ドラマ観たいんだけど」

「俺は今ニュースが観たい」

「……」

仕事が終わり、お風呂に入って、一息しに志貴の部屋に来た。

テレビは志貴の部屋にしかない。

ので、仕方なく志貴の部屋に観に来るのだが、志貴はいつもニュース番組を観ていて、簡単には私に譲ってくれない。

志貴の部屋は私の部屋の2倍ほどの広さで、同じ畳の部屋なのだが、すごくスタイリッシュにまとめられてる。


「たまには私に譲ってくれたっていいじゃん」

「嫌だね」

「なんか今日志貴機嫌悪くない?」

「……お前もツンツンしてるだろ」

「はい? してないんですけど」

「してる」

「してない」

「してる」

「……………ツンツンツンツンツン」

「やめろ死ぬっ」

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