呉服屋の若旦那に恋しました
しびれを切らした私は、志貴のバスタオルを無理矢理取った。
水を毛先から滴らせた志貴は、鋭い瞳で私を見つめて、
それから、笑った。
「はは、お前昔から俺が怒ってると思うと焦って饒舌になるよな」
「なっ」
「笑い堪えるの必死だったわ」
「なんなの!」
志貴は意地悪く笑って、私が奪いとった濡れたバスタオルで私を包んだ。
「やめて湿るっ」
「湿気攻撃」
「地味にすごい嫌だ~!」
「はは、だせー」
「わっ」
ぎゃーぎゃーと騒いでいると、思わず体勢を崩してしまった。
バスタオルで包まれたまま、ドサッと畳の上に倒れこんだ。
志貴はそんな私を上から見下ろして、意地悪く笑って、突っついた。
「蓑虫」
「ごろん」
「丸いから転がりやすいな」
「ごろんごろん」
「いって」
バスタオルにくるまったまま、ごろごろと転がって志貴の膝にアタックした。
志貴はこんにゃろうと言って私を転がそうとしてきたけど、私はじっと志貴を見つめた。
「あのさ、志貴、ずっと聞きたかったんだけど……」
「……ん?」
「あのさ……」