呉服屋の若旦那に恋しました
『妹さんのような存在なんですね。可愛らしいわ』。
そう言えば志貴、あの言葉に対して、なにも否定しなかったな。
今思うと、私のモヤモヤの根源は、それのような気がする。
美鈴さんが綺麗だから嫉妬したわけでもなくて、美鈴さんと親しいから嫉妬したわけでもなくて、
あの時、私をただの従業員として紹介して、妹という認識を、全く否定しなかったことに腹が立ったんだ。モヤモヤしたんだ。
そう言えば志貴の言うとおり、そのあと志貴に対する発言は全部ツンツンしていたかもしれない。
自分では気付かなかったけど、私、志貴に当たってたんだな。
でも、なんか嫌だったんだもん。
志貴が私のことをただの妹って思っていたら……そう思うと、なんか少し、嫌だったんだもん。
「おら、蓑虫娘」
「わう」
「もう日付超えるぞ、自室で寝なさい」
「……」
「……なんだ、まだ不機嫌なのか」
「寝る」
私は、むくっと起き上がり、すごすごと志貴の部屋を出ていこうとした。
が、志貴に手首を掴まれた。
「今なら聞こう、何が不満だった」
「……」
志貴は、真剣な瞳で私を見つめた。
「衣都、何が不満だった?」