呉服屋の若旦那に恋しました
志貴はいつも、2回目は優しく聞いてくるからずるい。
別に不満だったわけじゃないけど、言葉にするのが恥ずかしい。
私が黙っていると、ふっと頬に手が触れた。
「黙ってるならキスする」
「あかさたなはまやらわ」
「急にしゃべりだしたな」
「……志貴にとって私は、妹みたいな存在なの?」
「は?」
「なんで否定してくれなかったの?」
「……」
「……なんでそんなに、親しいの?」
「……」
「な、なんで黙ってるの……」
「……いや、単純に可愛いなと思って」
「真面目に聞いてるんだけどっ」
「なんだよ怒ってるのか」
「怒ってるよ!」
「妬いてるのか」
「それは違う」
「即答かよ」
志貴は、ふっと笑って、私の頭をポンポンと叩いた。
志貴の、営業用じゃない優しい笑顔を久々に見たので、なんだかドキッとしてしまった。
「美鈴さんは、着物教室で浅葱屋の着物の紹介もしてくれてるんや。実際に浅葱屋の着物を使って教えたり……、お世話になってる大切な仕事仲間なんや」
「え、そうなの……?」
「さっきの電話もその話。お見合いの話が来る前から、ちょくちょく一緒に仕事してる」
「知らなかった……」
「実際にその着物教室からうちの店を知って来てくれるお客様も増えてるから…、だからお世話になってる美鈴さんにはかなり手厚く対応してるんや」
「……」
「納得しましたか?」
「はい……」