呉服屋の若旦那に恋しました
待って。
なに、待って。え?
何した、今?
私は、放心状態のまま自室に戻り、敷布団にダイブした。
目を閉じてゆっくりさっきのことを思い起こすと、
志貴の真剣な瞳と、強引に引き寄せられた感覚と、志貴の唇の感触が、よみがえった。
私は、つくづく単純な女です。
今まであやふやだった線引きが、
今、はっきりと、引かれたのです。
志貴が、私の中で、“男性”というカテゴリーに、
しっかりと分類された、瞬間でした。