呉服屋の若旦那に恋しました



「元気だったか?」

「う、うん……」

「そんな幽霊見るような目で見るな」

「だって!! 4年ぶりだよ!?」

「そうだな」

「そ、そうだなって!」

「お前がいない間に、俺ももう三十路だよ……この4年間で京都弁も関東弁も使い分けるようになったし……」

「志貴おじさんじゃん!」

「うるせえ」

「本当に志貴なの……?」

「ああ、お前に触れることはできないけど……」

「やっぱり幽霊なの!?」

「お前はアホか今手触ってるだろ!」

「あ、本当だ、また騙された!」


本当に、志貴だ。

久しぶりのこのやりとりに、私は胸がいっぱいになってしまった。

志貴だ。あの、嘘つきで意地悪で几帳面で妙に器用な、あの、志貴だ。

私は、思わず志貴の陶器のように滑らかな頬に触れた。


「この4年間、何してたの……?」

「色々あったよ……」

「……」

「本当に大変だった、婿修行は……」

「え?! 志貴結婚するの!?」

「そうだよ」

「誰と!?」

「あんたと」

「そうなの!? おめでとう!!」


……え??

待って今なんて言った?

勢いでおめでとうとか言っちゃったけど、今凄い事口走った気がするこの人。

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