呉服屋の若旦那に恋しました


「え」


―――私は、志貴の手を取って、それから、ぎゅっと志貴に抱き着いた。

志貴は反動で後ろの柱にゴンッと頭を打った。


「いって、衣都、なに、どうした……!?」

「志貴」

「なになになに、お腹痛いか? 熱あるのか?」

「志貴……っ」

「ん?」


志貴が、私のことを心配して額に手を当てた。

心配そうな表情で私を見つめる志貴を見たら、なんだか堪らなくなってしまって、この感情になんと名前をつければ良いのか分からなくなってしまった。

志貴、ごめんね。嘘ついてごめんね。


でも私、志貴には嫌われたくないよ。


「あのね、私ずっと志貴に言いたいことがあって……」

「……なに?」


まだ寝ぼけてるのかな。

こんなに志貴と密着しているのに、普通に目を合わせられるの。

あのキスの日以来、ちゃんと合わせることができなかったのに。


「志貴、私ね……ってちょっと待って待ってなんかキスしようとしてませんか志貴さん!?」

「あ、悪いつい。いいよ続けて?」

「続けられるか! なんか一気に頭さえてきたわ!」

「ちっ、寝ぼけてるうちに済ませておけば良かった」

「…………」


志貴の顔が妙に近いと思っていたけれど、私は唇が触れる直前でふと我に返った。

軽蔑した目で志貴を睨むと、志貴は誘ってきたのはそっちだろーがと悪態をついた。

誘ってないわ!!

と、心の中で全力で突っ込んだが、志貴に抱き着いているこの状況に改めて気づいて何も言えなくなった。

私は慌てて離れようとしたが、志貴がそれを防いだ。

志貴は私をもう一度ギュッと抱きしめて、

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