お姫様を捜す前に
悪びれた様子もなく、へらへらっと。
「東、西。
数学の西谷先生。
ほら謝れー」
「すぅみぃまぁせぇんーでぇしぃたぁ」
『すみませんでしたーm(__)m』
……挑発してんな、コイツら。
基本的に東西は、伊織と仲の良いものと白龍と名のつくものしか崇めない主義だ。
「あ…いえ、伊織さまのお姉様方なら…」
モゴモゴと語尾を弱めながら、ペコペコ頭を下げる。
滑稽な。
「伊織さま、お怪我は…?」
恐る恐る聞く姿は、完全にビビっていた。
「ん?大丈ー夫」
そう言うと、心底ホッとしたように息を吐く。
「片付けますので、下がってください」
「んー」
伊織は素直に下がる。
中学生相手に、まるで犬か奴隷のように弱腰な中年。
ガラスの破片をちり取りで念入りに集めてる。
その姿は異様で、滑稽だ。
「……バカじゃねえの?」
酷く悲しそうに呟くのは、いつものこと。