お姫様を捜す前に
「たまきー?
おーい、たまきちゃーん?」
お?お?と私の顔を覗き込む。
私もそれに合わせて顔を背ける。
にや、と意地悪な目になり、脇腹をちょんっとつついてきた。
む…
くすぐったい、ぞわわとした感触。
「ひゃっ」
「ハハッたまきおもしろ」
「ちょっ…伊織!ひんっ!
もう伊織、やめ…ん?」
怒ろうとしたら、ピタリとやめる。
そしてハシバミの木を見つめ、睨む。
「…だれ?」
「えっ…」
人、いるの?
そして私は笑う。
「東ちゃん達じゃ…」
いつも東ちゃん達は伊織をつけている。
高校生だから勉学に勤しみなよ、と言うと、学年トップですが何か?と言われた。許さん。
だいたいストーカーが一位とかありえない…
「違う、誰だ?」
ガラスみたいに綺麗な目に殺気をまとわせる。
目付きが鋭くなった。
「…あ」
聞こえてきたのは、弱々しい男の声。
そして
「すみませ…あの、俺…」
ビクビクしながら出てくるのは、同じ制服の男の子。
淡いカフェオレみたいな髪色で、でも遊んでなさそう。
顔は全体的に整ってはいるが、まあ弱そうだ。