お姫様を捜す前に

「ま…まさか!」


また顔を赤くして。

でも相変わらずイライラの雰囲気はまとったまま。


「もう!…が、学校に行ってきます伊織さま!」


ぷん、とそっぽを向いて学校へ。


すると。




ひゅっ、と木から一人の少女が落ちてきた。



その子は長い髪を靡かせ、にこりと私達に微笑んで去っていった。



「……西ちゃん、いつから彼処にいたんだろ」


「あー、アイツは化け物だから」


西ちゃんは、体力等が底無しなんだよね…

怖いよ。


「聿くん、大丈夫ー?」


固まってた。




◇◇◇




聿くんを置いて学校に向かい、席につく。


三年生の教室はまだ慣れず、二年のときに行っちゃいそうになった。



席につくと、必然的に伊織と離れちゃうことになる。


それに少し落ち込んだ。



まあ


「たーまきー」


来てくれるから構わないんだけど。


人懐っこい笑みを浮かべて、私の机に手をついて。


「なーに?」


何か用でもあるのかな。


「いーや、なんでもねえ。
呼んだだけー」


…無意識だとしたら殴りたい。

そーゆー一言が私を熱くさせるのに。


「伊織」


「んー?」


「呼んだだけ」


やり返してみた。

私の世界一好きな名前。

口から発するとき、私は同時に幸せを噛み締める。

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