お姫様を捜す前に
「本当にお前らはラブラブだな」
ククッと笑う声が鼓膜を刺激する。
濡れたような黒髪が、笑うたびに揺れた。
「カヅくん!おはよ」
「おはよ、たまき」
にこり、爽やかに笑う。
カヅくんの美声に、ファンが多いことが頷けた。
「歌月ー」
「ん?」
「呼んだだけー」
このよくわからない遊びが気に入ったのか、カヅくんにまでし始めた。
「何だよお前、俺らも『ラブラブだねー』って言われたいのか?」
「なんでそー返すの!?」
「カヅくんと伊織はラブラブだよ」
「たまきには俺らがそう写ってるの!?
よし、伊織。
離れろ」
「嫌だー」
そう言って抱きつく伊織。
「あ、そーだ」
抱きつかれながら思い出したのか、話題を変える。
「さっき由田って奴にあった」
「聿くんに!?」
「うっわー」
「で、日向歌月さんですかー?って聞かれて、ファン宣言された。
そのあと、伊織さんといい美形ですよねーっていってきたから、殴っておいた」
「ソイツ歌月も好きなの!?」
「カヅくん殴っちゃだめだよ!
伊織もそこつっこもうよ!」
カヅくんの喧嘩っぱやさには苦労するよ。