お姫様を捜す前に
「俺、女オンリーだし…」
ドヤ顔もかっこいいから許したくなった。
「てか何?伊織もファン宣言されたわけ?
珍しいな」
うむうむと悩み始めた。
「…だねー。
俺も同じこと考えてた」
悲しそうに笑う伊織。
伊織には、私達以外の友達がいない。
その温厚で人懐っこい性格なら、皆が近寄ると思う。
けど、伊織はこの村の神様だから。
皆怖くて近寄らない。
だから、自分から話しかけてくる人なんて珍しいのだ。
少なくともこの村では。
伊織は崇高な人としてしか扱われないから。
「怪しいな」
「またー!
歌月は深く考え過ぎなんだって」
「バカ。
お前、危ないんだぞ?」
「大丈夫だって。
東西いるし」
「だからって…」
怒りだすカヅくんは、本当に伊織が好きなんだ。
「大丈夫だよ、カヅくん。
伊織は強いよ?」
ニコリと笑ってみせる。
カヅくんは優しいから、
「…そうだな」
それですぐわかってくれる。
伊織はいつ殺されてもおかしくないんだそうだ。