お姫様を捜す前に
教室を不安そうに覗く、一人の女の子。
わお、可愛くないかこの子?
人間関係の少ない私にはなん組かわからないその子は、ポニーテールにした黒髪を振りながら教室を見渡す。
「いません」
「カヅくん!」
わかりやすすぎる居留守を使ったカヅくんを叱責。
ひどいよカヅくん。
「うそうそ」
ククッと笑いながら、女の子の方へ向かう。
「たまき、伊織に伝えて。
ちょっと遅くなるって」
その言葉に伊織の存在を思い出す。
私より頭が悪い伊織は、机に突っ伏して現実逃避。
夢の世界を絶賛冒険してた。
「わ、わかった」
「たまきも先食べてていいから」
優しく笑い、去っていく。
「…またあの子、フラれるのかなあ…」
思わず呟いた言葉に、カヅくんは振り向く。
そして意外そうな顔を、ニヤリと妖艶にして。
私の耳元に顔を近づけた。
「わっ…カヅくん」
「…気になる?」
驚いてる私に、心地よい美声がかかる。
「そ、そりゃあ…幼馴染みだし?」
「そっか」
さっ、と離れて行った。
なんなんだ、一体…。