お姫様を捜す前に

二人の成長が止まった訳は謎。


まあこの謎がわかるのは、あと10年ぐらい先になるんだけど――


「お前ら頼むから自分のこと考えろよ。

ほらさっさと帰れー」


怒られ、渋々窓から退出し始める二人。

「では伊織さま、また」

ひらひらと笑顔で帰る西ちゃんとは対照的に、事務的な東ちゃん。

バイバーイと手をふってると、伊織がパカッといつのまにかお弁当箱を開けてることに気づく。

私も慌てて伊織の席の近くの机を許可なく移動し、伊織の席にくっつけて座った。


「あ、そーいえば歌月は?」

「告白」

「また?モテんねえ」

「ねー、羨ましい」


そんな会話をしていたら。



「紫恩さん、いる?」



私もお呼びだしがかかった。


月一くらいの割合で来る、これ。


私を呼び出した男の子は、見たことがない顔。

名前わかんないし、メガネくんとでも呼ぶか。


慣れた私は、そそくさとお弁当を包んだ。

今日はもう食べられない。


「たまきーモテんねえー」


楽しそうに言う伊織に、少し呆れつつ。


私は笑って受け流す。


「ごめん伊織。お昼、もうそろそろカヅくん帰ってくるはずだから」


「大丈夫だよー」


ウインナを口にもごもごくわえながら喋らないの。


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