お姫様を捜す前に


そう頭が認識した。



と。



「…うっ…ひ……んん」



涙が流れた。


これはいつものことだから。


馴れたもんだ。



もう3年も通って受けてる暴行に、なれない人間がいるのかな。




「……あ」



キンコン、と予鈴がなる。

もうそろそろ授業が始まるんだ。


「…行かなきゃ」


立ち上がって、頭についた桜の花びらをとる。


涙を拭って。



5時間目は国語だったっけ。



嫌だなあ、私あの先生嫌いなんだよね。


急がなきゃ、怒られちゃう。




「たーまきー」




ふいに、声が聞こえた。


声の主を探すと、教室の窓から伊織が手をふっていた。



「あと4分ー!急げよー!」



無邪気に笑い、叫ぶ。


「…うん」


伊織は私が暴行されてたの、知らないんだろうなあ。


そう思うと少しだけ、悲しくなった。




私は必死で隠してるのに、あなたはなんにも知らない。




まあ、それでいいんだけど。

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