お姫様を捜す前に

それから二時間くらいして。


「ただいまー」



カヅくんのお母さんが帰ってきた。


スーパーの袋と八百屋の袋という両刀使いをさげていて、おぉ主婦!って感じ。


ノーメイクなのかもしれないほどのナチュラルメイクな彼女は、40代半ばに見えないほど若々しい。


長めの黒髪を1つに結わえていて、どことなく柔らかな顔立ちがカヅくんと重なる気がする。



「おばさん、お邪魔してます」

「あ、おひさっすー」

「どうも」

「…zz」



思い思いに言葉を返した。


「あ、来てたんだ」


ふふ、と柔らかく笑い、そして。


「寝るなっ」


パコンッ☆


そばにあった大根でカヅくんを殴った。

大根で!


「いっ…」


「もう、ダメじゃないっ!
歌月ったら何回寝るの!」


「大根はないでしょ…ふぁ」


「あら、少し曲がっちゃった。
まあいいか、擦っちゃえばかわりないもん」


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