ラブレター2
ドンっ!!と大きな音をたて、始まった花火。

目の前の出来事だから、とても、大きく映る。

鼓膜が破ける。とか考える暇もなく、止めど無く、響く音。

やはり、柳や大玉が好き。

僕と、同じ気持ちの人がいるらしく、それが上がると、

「た~まや~。」

と、叫ぶ者。

指笛まで鳴らす者もいて、馬鹿らしい。と思ったが、祭りだし。とも、思ってた。

掌に付いた砂を、ズボンで叩(はた)き、膝を抱え、終わらない花火を、見ていた。

「ねぇ、キスは?」

隣りの女の子に、聞いてみる。

笑って誤魔化され、再度、空を見上げた。

最後の一つが上がり、拍手が海へ、投げ掛けられる。

まだ、上がる気配を感じる人達は、数分間だけ、座っていたが、それを確認すると、立ち上がり、ゾロゾロと帰って行った。

「ねぇ。」

「ん?」

「キスして。」

「え~。」

冗談だと分かっていたが、そんなに…。と、腹を立てる。

「もういい。帰ろう。」

「怒ったの?」

何も言わないまま、歩き始めると、キスしよう?と、言われた。

一度、キスをして、もういい。と、また、呟く。

帰り道、足が痛い。と言うあいがいたにも関わらず、自分の家へ、足早に向かう。

「彼氏じゃないもんね!!コソコソしなきゃ、いけないもんね!!」

怒鳴っては、違うもん。と、返される言葉。

余計に、雰囲気が悪くなる。

何に、苛々しているかさえも、忘れてしまう。

お金は無い。

車も持ってない。

あいの、彼氏ではない。

あいの前では、何一つ誇れる物が無い。

今更ながら、それを話したところで、後の祭りだ。

混む。と予想されていたので、車は出さずに、無理言って、祭りに付き合ってもらったのに、あいの家の前に着き、

「じゃーね。」

と、言っていた。

「…ゴメン。」

「何?」

「ゴメン。」

「いいよ。彼氏じゃないし。付き合ってくれて、ありがと。じゃーね。」

「…違う。」

なかなか、家の中へ入らないあいが心配で、分かった。と言い、キスをし、悪かった。と、頭を撫でる。

彼氏の肩書きは、大きい。と気付く。

数日後、この間よりも、小さな祭りの後に、僕の友達と、あいと、いつもの場所で、小さな花火をした。

その日、笑うあいを見たら、やっぱり、この顔が、僕に幸せを教えてくれるもかな。って思うと、この間の事なんて、都合良く、僕は忘れてた。
< 30 / 100 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop