ラブレター2
「は?」

遡(さかのぼ)ること、一時間前。

「ねぇ、何でピアスしてくれないの?センス悪かったかな…?」

照れながらも、切なさを含んだ言葉を、あいに問掛けていた。

「いやいや、そんなことないよ…。」

そう言って、僕を見て、

「ゴメン。」

と言った。

あぁ、彼氏じゃないし仕方無い。と思った。

「まぁ、そうだよね。」

「違う。」

否定するあいは、何かを隠しているみたいだった。

「ん?どうした?」

ピアスとか、小物をどうこう言う程、僕は小者ではない。

仕方無いこともあるのが、事実なのだから。

「………た。」

「ん?ゴメン。聞こえなかった。」

笑って、聞き直してはいた。

「…………。」

再び、口を閉ざしたあいに、僕は優しく言えた。

「何かあった?怒らないよ。」

「…ゴメン。無くした。」

一瞬、頭が真っ白になったが、約束は守る。と思われる僕は、喉まで出かけた言葉を、飲み込んだ。

「そっか。安物だから、平気だよ。」

詳しく聞いた話だと、僕には分からないが、ピアスを止める金具が無くなったらしい。

「あ~あ。軽くショック。」

笑いながら言えた自分を、誉めてあげたかった。

「キスしたら許す。」

キスばかり言っていたら、おかしな人に思われるのだろうか。

いつも言っているわけではないのだが、

「うん。」

と笑ってくれたあいがいたから、ピアスくらい、どうでもいいや。と思ってた。

「は?」

目を閉じるあいがいて、笑いながら、

「ん?言葉、聞き間違えて無い?」

そう言っても、笑いながら目を閉じるあいに、負けた。

「ピアス無くしたのに、キスを貰えるなんてズルイわ。」

ワザとらしく女の真似をして、嬉しそうに笑うあいを見て、僕も微笑んだ。

恥ずかしいことを自分からはしない、あい。

でも、僕は知っている。

僕が心から望んで、言葉にできたことは、必ずしてくれる。

大事な物をくれる。

「今まで付き合った子にも、同じことしてんの?」

こんな質問は、ギャンブルに等しい。

大きな絶望を貰うか、小さな喜びを貰うか。だから。

「ゆうくんが、初めて。」

それと同時に、漏れる言葉。

「なら、エッチも、俺が初めてが良かったな。」

「ゆうくんも言えないでしょ?」

「…けど、」
「でもね?自分からしてあげたのも初めてだし、いつも初めての気持ちだよ?」

嬉しいけど、僕の知らないあいの過去に嫉妬するくらい、君の全てが欲しかったんだ。
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