Blood Lovers



「お前の血、目障り」

「…え?」

「その匂いに、低級どもが湧いてきてる」

「えっと、それは…どういう意味ですか?」



わたしの言葉が気に障ったらしく無言で睨むキリトさんに代わって、学園長が口を開いた。



「あの林は、特殊な結界が張ってあるんだ。
って言っても、普通に生活している人にとっては何の影響もない。
君は林に入って分かったでしょ?
外見と中身は異なる世界だって言うこと」

「…はい」



あのとき感じた違和感は、違う世界に入ったからなんだ。



「わたしたちが“裏林”と呼ぶものを、あっち側の住人は“暗黒の森”と呼んでいる。
結界であっちからこっちには出て来られないようにしているんだ。
しかし、逆は可能でね…」

「じゃあ、わたし」

「そう、こっちからあっち側へ行くことは容易なんだ。
そして、一度林に入ってしまった存在はずっと認識され続ける。
いくら注意してても、向こうから誘導され、無意識に林に入ってしまいやすくなるんだ。」



無意識にだなんて…

もうあんなところ近寄りたくないよ。



「君の血はヴァンパイアにとって極上級みたいでね。
君を求めて、いろんなヴァンパイアがこの林にやって来ているんだ。
今は低級ばかりで心配ないけど、キリトみたいに上級のヴァンパイアだとあの結界は効果ないからね。
林から遠ざかっていても安全でなくなる時が来るかもしれないんだ」

「そんな…」



思い出すだけで身体が震える。



「わたし、血を吸われたら死ぬんですか…?」

「通常手加減ってものがあるけど、君の場合は特別だからね。
もしかしたら全部吸われて死に至る可能性もある。
低級も甘く見てはいけないよ」



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