続・危険なアイツと同居生活





「違うんだよ」




再び慎吾が小さく零す。




「彼女が好きなのは俺じゃない。

……Fの酙だよ」



「何だそれ。自惚れ?」




にやにや笑う賢一。

だけどその横で、蒼は複雑な顔をした。






そうだよね。

出会った頃の蒼も同じことをずっと悩んでいた。

女性はみんな碧を求める。

本当の蒼を見てくれないと。

今でこそ、大学では蒼はおバカキャラで通っているけど……

でも、はじめは大変そうだったよね。

いつも一人でいたり、女子に追い回されたりして。






だけど……




「慎吾。それはいけないよ」




蒼はぽつりと呟いた。




「ずっと仮面を被って付き合ってはいけないでしょ。

慎吾を認めないなら、それまでの女じゃん」



「蒼って、時々残酷だな」




賢一は顔を歪めて蒼を見た。

だけど、蒼はただまっすぐに、だけど少し悲しそうに慎吾を見ていた。




< 242 / 781 >

この作品をシェア

pagetop