続・危険なアイツと同居生活
「違うんだよ」
再び慎吾が小さく零す。
「彼女が好きなのは俺じゃない。
……Fの酙だよ」
「何だそれ。自惚れ?」
にやにや笑う賢一。
だけどその横で、蒼は複雑な顔をした。
そうだよね。
出会った頃の蒼も同じことをずっと悩んでいた。
女性はみんな碧を求める。
本当の蒼を見てくれないと。
今でこそ、大学では蒼はおバカキャラで通っているけど……
でも、はじめは大変そうだったよね。
いつも一人でいたり、女子に追い回されたりして。
だけど……
「慎吾。それはいけないよ」
蒼はぽつりと呟いた。
「ずっと仮面を被って付き合ってはいけないでしょ。
慎吾を認めないなら、それまでの女じゃん」
「蒼って、時々残酷だな」
賢一は顔を歪めて蒼を見た。
だけど、蒼はただまっすぐに、だけど少し悲しそうに慎吾を見ていた。