続・危険なアイツと同居生活
「慎吾?」
顔を見合わせる女子たち。
「慎吾?
そんな人、たくさんいるよねぇ」
「そう?
……慎吾じゃなくて、酙って言ったら分かるかな?」
蒼は少し困った顔をしながら、爽やかにそう聞いた。
その瞬間、
「酙!?」
騒ぎ出す女子たち。
「酙なら経済学部棟にいるよね!」
「あたしたち、案内してあげる!!」
そうなんだ。
蒼は、蒼とかザキ氏とか呼ばれているが、慎吾はその名前すら認知されていない。
その事実を知って胸が痛くなる。
慎吾はどんな気持ちで学校に行くのだろう。
みんなを眺めて何を思うのだろう。
知性的で、穏やかで、だけどマイペースで馬鹿も出来る慎吾。
あたしは、そんな慎吾をみんなに知ってもらいたい。